2024年01月22日
地域の多様な人々の思いが支える「子どもが安心できる居場所」【こどもの居場所づくり事業】

小学校も多い住宅街のなかにある特別養護老人ホーム「山手さくら苑」の一部屋。月曜日の夕方、元気いっぱいの地域の小学生たちが続々と集まってきます。
さくらCaféは、神戸市内の約280ヵ所(令和5年6月時点)で取り組まれている「こどもの居場所」づくり事業の一つ。子どもたちの孤独・孤立を防ぎ、身近な地域で子どもや親を支えるための取り組みです。
そのなかでも「さくらCafé」は、地域の団体、介護施設、大学生、福祉の専門家といった多様な人々の運営によって支えられているのが特徴。
この日も多くのスタッフの方がひっきりなしに動きまわりながら、子どもたちを出迎えていました。


さくらCaféは放課後17時半から19時半の2時間、大きく3つの時間割で進められます。
最初に学習タイム、そのあとに食事タイム、最後に遊びタイムです。
17時を回ったころから、学校を終えた子どもたちがちらほらと集まってきました。ここに通う子どもは20〜25名程度ですが、この日のスタッフは全4つの関係団体から合計17名。
「こんにちは~!」とそれぞれが声をかけながら、各自で教材に取りかかります。大学生が寄り添い、勉強のサポートはもちろん、おしゃべりをしたり、自由にコミュニケーションをとったりするので、部屋の中は常にしゃべり声や笑い声であふれています。


食事を出すときの会話から感じる、「ご近所さん感」。
しばらくすると、部屋のなかにおいしそうな匂いが漂い始めます。施設が提供している食事の準備が始まったようです。配膳の担当は、地域のふれあいのまちづくり協議会のボランティアのみなさん。
匂いにひかれて、子どもたちが次々にトレーを持って列を作り、順番におかずなどを取っていきます。




食事が終わったあとは、自由に遊んでもいいし、大学生が毎回考える「みんな遊び」に参加してもいいのだそう。
この日、ごはんを食べてさらに元気になった子どもたちは「だるまさんが転んだ」をアレンジした遊びなどで、おおはしゃぎしていました。
【スタッフの声】多様な人々の思いが支える「こどもの居場所」
子どもにとって安心できる居場所を作りたい。

神戸親和大学 教育学部 児童教育学科 3回生 梶原 純夏さん
―常に子どもたちから大人気の様子の梶原さん。大学生の代表としてコーディネーターをしています。
お姉ちゃんみたいに思って懐いてくれる子もいるんですけど、あたりの強い子もいるし、なかなか懐いてくれない子もいて、実は対応はいろいろ工夫して考えながらやっています。
子どもと接するときは、様子を観察して、自然に本音を引き出せるように心がけています。例えば、もし悲しそうな顔をしている子がいたら、「なんか嫌なん?」「家でなにかあった?」などと聞いてみると、話してくれることもある。そうして話してくれたら、とにかく話を聞いてあげて、共感してあげます。学校とか家ではそういったことはなかなか話しづらいので。
「安心できる居場所をつくってあげたいな」という気持ちが一番ですね。
ここでは勉強ができなかったり、嫌いなものを食べられなかったりしても、「大丈夫やで」「どうやったらできるかな」と言って、まずは安心してもらう。そこから気軽に話してもらえたらと思っています。
あと学校とは違って、学年や支援学級というような枠をこえて他の子と触れ合えるというのが楽しい子もいるみたいです。
例えば、5年生と2年生の子がお話しして、「5年生は自然学校あるんやで!」という話を2年生の子が喜んで聞いていたり、「5年生になったらこんなことできるんやで、知ってた~?」という話ができたりすると、学校が楽しくなったりもしますよね。
子どもにとって良い居場所になるように、会話のなかで聞けた感想によって遊びの内容を変えてみたり、食事についてなにか意見が出てきたら、運営の方にフィードバックしたりもしています。
たくさんの人が関わっているということも大切だなと思います。子どもって、こういう人と出会ったっていう印象やそこでしてくれたことをすごく覚えています。将来、例えばこんな人になりたい、って思ったときに勇気をもらえる場にもなるんじゃないかな、と思います。


【スタッフの声】身近な地域とつながれば、生活のなかでの見守りにつながる。受け皿となる場所です。

神戸真生塾 子ども家庭支援センター センター長 久山 啓さん
―さくらCaféの運営には、子どもの福祉の専門家と連携していることも大きな特徴です。
ソーシャルワーカーや臨床心理士のいる「神戸真生塾」は、なにかトラブルがあったとき、相談に乗ることも。
その場でのトラブルということだけではなくて、貧困など、家庭などで問題を抱える子の存在に気付く場になったり、こういった場に交わらせていくことが大事だと考えていて、真生塾としてはそういう視点も持って取り組んでいます。
でも基本的にここは「子どもの居場所」。学生さんもたくさんいるので、子どもにとっては1対1で関わってもらえる。例えば、家では3人兄弟の一番上で下の子の面倒をみないといけない立場だけれど、ここに来ればお姉ちゃんに甘えて遊べたりする、といったことも大事ですね。
それにここは、問題を抱える子と地域の人との関わりができる受け皿にもなります。そうすると、スーパーなんかですれ違ったときに声をかけて、挨拶して、見守ってもらえる。身近な地域のなかで知っている人がいる、ということは良い効果があります。
神戸真生塾としては他の子ども食堂にも多く関わっていますが、こんなにいろんな人が関わっていて恵まれた子ども食堂はなかなかないなと感じますよ。

【スタッフの声】「とにかく長続きさせる」そのためにしっかりとした体制で運営して、子どもたちがたくさんの人に出会える場にしたい。

神戸諏訪山ふれあいのまちづくり協議会 委員長・横山 直己さん
―子どもたちの活気はもちろんですが、みなさんが積極的に子どもへ声をかけたり、ときには叱ったりと、とても前向きに関わっていらっしゃる様子が見られます。
休む間もなく子どもや運営スタッフとコミュニケーションを取られていた、ふれあいのまちづくり協議会の横山さんにお話を伺いました。
みんな自分から手を挙げてボランティアで来ている、気持ちを持った人たちが集まっています。ふれあいのまちづくり協議会でも、順番制などではなくて、希望者が7〜8人いる中でローテーションを組んで来ています。そうでないと長続きしないでしょう。
長続きさせることをみんな大切に思っているから、ほころびが見えたときに早めに対応できるように、毎回みんなでミーティングをしています。
私は、「子どもに差別なく居場所を提供する」「やるからには良いものを提供する」ということが大切だと思っています。
自分にも孫ができて、やっぱり子どもはかわいいと思うようになりました。そう思って子ども食堂をしていると、やっぱり楽しいし、どうしたら良い形で続けられるかを考えます。
そのために関係するそれぞれの人のところへ直接、運営の相談に行ったりしますよ。そうするとみんな賛同してくれて、戦力になってくれる。そうしたらモチベーションもあがって、良い形で続けていけるんじゃないかと思います。



子ども食堂「さくらCafé」 |
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所在地 |
神戸市中央区下山手通7丁目1-16(特別養護老人ホーム「山手さくら苑」内) |
電話番号 |
078-367-3780(受付時間 月~金曜日 9時から18時) |
開催日時 |
原則 第2・4月曜日 17時30分から19時30分 |
利用対象者 |
利用対象者:おもに小学生 |
利用料 |
子ども100円 |
注意事項 |
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ホームページ |