2023年11月01日

ともだち だいすき

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3~5歳

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 かつて、私が担任した子どもたちは、4歳児クラスの時に、大きな積み木や板を組み合わせて、部屋のぬいぐるみをかき集めて、雛飾りを再現して、私たちをびっくりさせました。この時からとてもパワフルだったのですが、5歳児クラスになった4月1日、部屋にあったピースの多い難しいパズルをいきなり崩して、遊ぼうとし始めました。結局、難しくてできなかったのですが、「クラスが変わったから、自分たちはすごく大きくなっている!」と思い込んで進めるパワーは素晴らしいなと思いました。

 パワーに溢れて、なんでもできる、やってみようとする子どもたち。今回は4歳児クラスの子どもたちの育ちについてお話ししたいと思います。元気な姿を見せる子どもたちですが、友だち関係が不安定なのもこの時期の特徴です。友だちと遊ぶことが面白いと気づき、一緒に遊び始めるのですが、まだ相手の思いを十分に考えることはできません。Aちゃんはこの遊びをBちゃんと一緒にしたいけれど、Bちゃんは、今はその気分じゃない。Cちゃんとしている遊びを続けたい。「あとで一緒にするって言ったやん!」そこで大げんかが始まります。「もう○○とは遊ばへん!」生まれて4年くらいの子どもたちですので、長い見通しは持てませんし、今、遊んでくれなければ、一生遊んでもらえないくらいの悲しみになります。家に帰っても何かしら沈んでいて、おうちの方に尋ねられて「Aちゃんが遊んでくれない!」と泣き出すことも。お家の人はびっくりされますよね。子どもたちは、その時は本当に泣くほどつらいのです。が、その次の日はまた新しい日、すっかり忘れて仲良く遊んでいたりします。

 友だちとつながり一緒に過ごすことが楽しくなる4歳児。けれど、それぞれに心を持っている友だちが全て思い通りになることはない。そのことは子どもたちにとっては試練です。いじめではないか?と心配されるお家の方もいらっしゃいますが、相手の気持ちに少しずつ気付き始めた子どもたちには、相手をわざと傷つけるような深い悪意はありません。相手の思いと自分の思いにどのように折り合いをつけていいのか分からない葛藤です。その後の人間関係の練習の時期だと思っていただければと思います。

 私たちはいつも目の前の子どもたちが悲しい、苦しい思いをしないことを願っています。けれど、子どもたちは、こうした葛藤、小さな困難を避けて通ることはできません。この時期にしっかりと練習することで、譲り合い、折り合いをつけながら、大好きな友だちと遊び続ける方法を自分で獲得していく。大きくとらえれば、人とつながる力の土台を作っているのです。保育所等では、4歳児クラスでこの葛藤を大いに経験し、乗り越えていくことで、5歳児クラス、いわゆる年長さんになった時、大人の助けをあまり借りることなく、集団遊びが続けられるようになったり、トラブルを解決できるようになったりし始めます。そのことは子どもたちにとって大きな自信となります。

 保育所等では大人は、どちらが正しい、と先回りしてジャッジするのでなく、それぞれの思いを聞き、その思いを受け入れながら、相手の思いに気付かせながら、見守るようにしています。お家の方は、大事な子どもが家で泣いていると、どうしよう、大丈夫かな、と心配になられることでしょう。その際は、子どもの思いに寄り添って、「つらかったね」と話を聞いてあげてくださいね。お家の人がどんな時も見守ってくれている、自分の思いを聞いてくれる、味方でいてくれる、そのことに力を得て、子どもたちは次の日、友だちに「遊ぼう」と声をかけるパワーを取り戻せます。また、お家での姿を保育所等の先生に伝えて、園での様子を聞いていただきながら、一緒に心を合わせて見守っていくことも大切なことです。
 人とつながることを喜びにできる子どもたちに、力を合わせて未来を切り開いてほしいですね。


※旧子育て応援サイト 2022年9月22日掲載分

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北林 久仁子 先生

(保育士・こども家庭局担当部長)

神戸市公立保育所保育士、主任、所長を経て、2022年度より、こども家庭局指導研修担当部長として、保育所・幼稚園・認定こども園などで乳幼児保育・教育に関わる職員の研修の企画運営等に携わる。これまでの保育現場での様々な出会いや今の仕事で気づいたことなどについて、コラムを執筆予定。

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