2023年11月01日

子どもと向き合う

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0~2歳

3~5歳

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 昨年末、不適切な保育についての様々な報道がありました。お子さんが保育所等に通われている保護者の皆さんも、これから保育所等への入所を考えておられる皆さんも、不安になられたのでは、と思います。しかし、ほとんどの保育所等は子どもの人権を尊重して保育をしています。今回はそうしたお話をさせていただきます。

 私が、担任ではなくフリー保育士の立場でクラスに補助に入ったとき、オムツに大便が出ていて、それを替える時は毎回子ども本人に確認していました。「ごめんなさい。替えさせてもらっていいですか?」と。子どもにとって、信頼している担任以外の保育士に大便のオムツを替えられることは、本当は嫌だと思うのです。私はどちらかと言うと介護されるほうの年齢に近づいていますが、自分がその立場になった時、誰にでもオムツを替えられるのはやっぱり嫌です。子どもが、そうした繰り返しの中で、『良いよ』と信頼して任せてくれるような表情を見せてくれるようになると嬉しくなりました。

 1歳後半から2歳児くらいの、イヤイヤ期に入っていく子どもたちと過ごす中で、よく見る光景があります。天気のいい日に外遊びをしていて、そろそろ食事の準備の時間が近づいてきました。保育士が「部屋に入りましょう」と声をかけると、「いや」と逃げていく子ども。毎日のようにそうしたやり取りが続くと保育士時代の私は「いつも○○ちゃんは…」と思ってしまうこともありましたし、時には厳しい言葉を言ってしまい、反省することもありました。そうしたことはおそらくご家庭でもあるのではないでしょうか?

 私は2歳児の言葉の発達の研究をしたことがあって、その時の指導の先生に、そうした場面では、気持ちに寄り添う言葉をかけるといいよ、と教えてもらったことがあります。そこで、やってみました。

 大人:ご飯だからお部屋に入りましょう。
 子ども:いや
 大人:遊ぶの楽しかったもんね。もっと遊びたかったよね。
 子ども:…

 その時の子どもの表情は、きっとせかされる言葉が来ると思っているのに、違う言葉が来た!?と驚いているような表情でした。そして、そのまま部屋に向かって歩いていきました。これは、一人の子どもだけでなく、一回だけでもなく、何度も成功しました。

 子どもたちは実はよく分かっているのだと思います。食事だから部屋に入るべき。それでも遊びたい。その時に、「そうだよね、遊びたいよね」と気持ちを分かってもらえたから、気が済んだ、そんな感じでしょうか?こうしたやり取りを通して、子どもたちは自分の気持ちが尊重されていること、大切にされていることを感じ、その先には、相手にも気持ちがあることに気付き、それを尊重しようという心の育ちにつながっていくのだと思います。
 保育所等の現場ではそうした試行錯誤を重ねながら、ささやかな積み重ねを丁寧に行っています。

 子どもの人権を尊重するとは、きちんとその思いに耳を傾けることで、すべて子どもの言いなりになるということではありません。その時にそうしたい気持ち、そうしたくない気持ちをしっかりと受け止めて、「○○ちゃんは、そうしたかったんだね。でも私(お母さん、お父さん、先生)は○○だからこうしてもらえると嬉しいな」と私の気持ちも、事情も、きちんと伝えることが大切だと思います。ちゃんと交渉する。子どもだから大人のいうことには従いなさいでなく、子どものいうことだから全部聞いてあげようでもない。人権を尊重して対等に向き合うとはこういうことではないかと思います。

 とはいえ、ご家庭では、実際に子どもたちが、体調が悪い時や眠い時、不機嫌モードに入っている時には、何を言っても通じないということもあるでしょう。時には叱りつけてしまってすごく後悔することもありますよね。いつもきちんと対応できなくてもいいのです。根本のところで、どうしてそうしているのかな?と冷静に見ようとすること。子どもの思いを理解しようと努力すること、そして、自分の思いもしっかりと伝えようとすることを忘れないことが大事だと思います。

 子どもたちを囲むたくさんの人とつながりながら、未来を生きる子どもたちの今をみんなで幸せなものにしてあげたいなあと思います。


※旧子育て応援サイト 2023年2月10日掲載分

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北林 久仁子 先生

(保育士・こども家庭局担当部長)

神戸市公立保育所保育士、主任、所長を経て、2022年度より、こども家庭局指導研修担当部長として、保育所・幼稚園・認定こども園などで乳幼児保育・教育に関わる職員の研修の企画運営等に携わる。これまでの保育現場での様々な出会いや今の仕事で気づいたことなどについて、コラムを執筆予定。

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