2024年08月23日
【子育てのヒント】叱るってどういうこと?~対応編~
こんにちは。神戸市総合療育センターの疋田です。
前回は子どもを叱ることの意味をいくつかの視点から考えてみました。今回は子どもを叱る場面での対応を考えてみたいと思います。
〇叱る基準を考える
まず叱る基準を考えておくと、子どもにとって分かりやすい一貫した対応をとることができます。例えば、子どもの大けがや大事故につながる危険な行動は大人が何としても止める必要があります。車の走る道路に飛び出そうとする、火に触ろうとするなどの危険行為は、「ダメ」と大人が強い態度で止めなければなりません。 また、友達を叩くなど、相手に迷惑がかかることも止める必要がありますが、こうした場面では子どもにも大抵言い分があるため、次の対応も参考にしてもらえればと思います。
〇子どもの言い分を聞く
大人から見るとどんなにいけない行動でも、子どもには子どもなりの言い分があります。言い分の良し悪しはあるにしても、理由を聞く前に頭ごなしに叱られると、子どもは自分を否定されたような気持ちになります。理由を聞いてもらうというワンクッションがあれば、大人に受け止めてもらえたという安心感につながり、大人からの説明も受け入れやすくなります。ただし、大人も叱りたい気持ちをぐっとこらえることは簡単ではないので、理由を聞く前に「嫌だったね」「くやしかったね」と前置きをすると(気持ちは込められなくても大丈夫です)、大人も一旦クールダウンできます。言い分に耳を傾けてもらえた経験が重なると、正直に話をすれば頭ごなしに叱られないという安心感から、たとえ失敗してもごまかさずにきちんと大人に伝えられるようになっていきます。
〇すべき行動を伝える
子どもを叱るときはつい「〇〇したらダメ」と否定形になりがちです。否定形ではどうしても‘叱られた’という気持ちが強くなるため、できるだけ「すべき行動」を伝えることがコツです。否定形で叱った方がその場は手っ取り早く収まるのですが、前回の「叱る理由」で書いたように、‘本当はどうしたらよいのか’を伝える方が、子どもの学習につながり、自立に向けては実は近道なのです。ただし、否定形からすべき行動への変換は大人にとっても難しく、繰り返しの経験が必要です。
以下の例も参考に、アレンジしてみてください。
〔具体例〕
・走ったらダメ → ゆっくり歩こう
・大きな声で話したらダメ → 10の声じゃなくて1の声で話してみよう
・手で食べたらダメ → スプーンを使って食べたらカッコいいよ!
・そんな言い方したらダメ → そんな言い方だとお母さん悲しいな。〇〇って言ってほしいな。
・お友達を叩いたらダメ → お友達痛いよ、何が嫌だったの?一緒に〇〇って言ってみよう。
次回はまた少し別の視点から、子どもへの関わり方についてお話ししたいと思います。
疋田 みわ 先生
(心理士・こども家庭局総合療育センター課長)
臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2023年度より、神戸市総合療育センターの相談診療課長として、障害や発達の特性をもつ子どもの相談や療育指導に関することなど、子どもの発達相談支援施策に携わる。子どもの発達や子どもとの接し方などについてコラムを執筆予定。