2024年09月13日
【子育てのヒント】インクルーシブ社会について考えよう
インクルーシブという言葉を聞いた事がありますか?
インクルーシブ社会とは、性別や人種、民族や国籍、障害の有無などによって排除される事なく、すべての人が公正に生活出来る社会の事です。
エクスクルーシブ(排除的)の反対の意味で、様々な背景を持つあらゆる人が排除されずに一緒に住める社会と聞くとイメージが着きやすいと思います。 SDGsの目標『誰1人取り残さないleave no one behind』でも使用されており、私たちが意識していかないといけない課題でもあります。
我が子達も日本人ですが、アメリカの学校に行く事になり、この目標の大事さを痛感しました。話す言葉や肌の色が違っても、学校に楽しく通えるというのは、どれほど意味があることなのか考えさせられました。
また同様にインクルーシブ教育についても、聞く機会が増えてきたのではないでしょうか?
実はインクルーシブという言葉が注目されるようになったのは教育のエリアからと言われています。1979年以後、重度な障害を持つ子もみんなと同じ教育を受けられる環境になりましたが、障害のある子を特別支援学級に分けるインテグレーション教育が主流でした。近年取り入れられているインクルーシブ教育では、障害の有無で区別することなく、1人1人のニーズに応じた合理的配慮を行う教育方法が用いられています。
私が現在住んでいるアメリカには、沢山のインクルーシブ公園があります。筋力が弱い子、自分で上手く持てない子でも乗れるブランコや、車椅子から移りやすい椅子があるプールなど、今まで意識していなかった視点を持つことができました。
この遊具があることで、公園に行きにくかった子どもが行けるようになると、子どもや親の交流に繋がり、お互いを知ることで周りの子どもや大人も今までに考えなかった視点を意識する事が増えます。まずみんなが意識をもつ、その点が1番大事だと思っています。
もし、子どもの背丈では向こう側を見ることができないような高いブロック塀があった時、あなたはどのような対策をしますか?
全ての子どもに同じ高さの台を与えるのは“平等”で、みんなが見えるように1人1人の背丈に応じた高さの台を与えるのは“公平”ですが、そもそもブロック塀をフェンスに取り換えてしまえば、どんな背丈の子どもでも、向こう側を見ることができるのではないでしょうか。その点に気づき、考え直してみるとまた違った答えが見つかるかもしれません。
私たちが未来を見据えて出来る事は、意識をして考える、そしてそこに社会的障壁があるなら改革をする。多様性を活かせたら、また違った新しいアイデアが見えてくると信じています。
気がつかないと日常化してしまう風景も少し視点を変えて見てみましょう。きっと未来に繋がる解決策が見えるはずです。
井窪 薫 先生
(精神科医・4児の母)
精神保健指定医、産業医。6歳、4歳、3歳、2歳を子育て中。長女の子育て中に大学院に通い、医学博士を習得。現在はアメリカで児童精神医学を勉強中、日本とアメリカの子育ての違いや共通点など、自身の経験をもとにコラムを執筆。