2025年02月14日
【子育てのヒント】お母さん、お父さんへのメッセージ
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こんにちは。神戸市総合療育センターの疋田です。
このコラムもとうとう今回で最終回となりました。最終回は今現在子育てに奮闘中のお母さん、お父さんに向けて私なりのメッセージを送りたいと思います。
〇子育ての果てしない不安
こどもの発達に一定の順序や目安はありますが、子育てはセオリー通りでないことの方が多く、個性も様々です。私自身、第1子出産後初めて病室でこどもと過ごした夜、授乳を終え3時間後にタイマーをセットしてこどもをベッドに寝かせた途端ぐずり始めたときは「え?マニュアルでは3時間後じゃないの!?」と泣きたくなりました。
こうした予測不能な出来事が果てしなく続くことへの不安に襲われた感覚を忘れることができません。
〇こどもは必ず変化する
セオリー通りにいかない子育てですが、多くの発達相談を通して感じるのは、どの子も必ず変化するということです。
相談の中には医療が欠かせない複数の疾患を持つお子さんもおられますが、風邪をひくとすぐに入院していた子が年長時には風邪をひいても家庭で治すことができたり、週1回しか登園する体力のなかった子が徐々に登園回数が増えたりと、その子なりに変化することを多くのお子さんを通して実感しています。
〇一緒に取り組むことの意味
発達から少し話題はそれますが、何年か前のニュースで「なぜ山形県の10代(選挙)得票率は全国首位なのか」という記事を読んだことがあります。まだ多くの地域で若者層の選挙得票率は低いですが、全国首位の山形県が調査したところ、「18歳の(投票者)の8割が親も(一緒に)投票しており、逆に親が行かなかった場合は得票率が5%以下だった」という結果が出たそうです。
このコラムでも「褒める」ことや「大人が一緒に行う」ことについて書いてきましたが、親御さんからは「甘やかすことにならないか」と聞かれることがよくあります。ですが、この山形県の調査結果を見ると、18歳になっても初めての体験は大人が一緒に行うことが効果的、つまりこどもに身に付けてほしいことこそ大人が初めの一歩を伴走することが自立へつながることを示していると思います。
〇こどもの「自立」とは
子育てとはシンプルに言うと、こどもの「自立の過程をサポートすること」と言えるのではないかと思います。
こどもの「自立」とは、一人で選択・判断して生活できるということだけでなく、必要な時に助けを求められる、周りに応援しサポートしてくれる人がいるということも、1つの自立の形だと思います。
そのようなこどもの応援団がいる環境を整えるとともに、こども自身に助けを求める力を育てることが、その子なりの自立に向けた大事なサポートになると思います。
〇子育てのキーワードは「安心感」
最後に、子育てにおいて大事なキーワードを1つあげるとするなら「安心感」ではないかと思います。こどもが初めてのことを体験し、新たな力を獲得していくとき、思うようにいかなくても失敗しても、もう一度チャレンジできるのは、お母さんやお父さんからの「大丈夫」というメッセージで「安心感」を得られるからでしょう。
幼少時のかんしゃくやイヤイヤ期、思春期の反抗期のエネルギーに付き合うことは特に大変ですが、それはこどもたちも新たな力を身に付けよう、新たな環境に適応しようと全力でもがいている過程なのです。そこに付き合ってもらうことで、たとえ理想の状況にはならなくても、こどもたちは折り合う力や調整力を身に付けていきます。
4回に亘るコラムを読んでいただき、ありがとうございました。
子育ての悩みは尽きませんが、ご家族が一生懸命悩み、その時々で全力で考えたこと、そのこと自体がこどもにとっての財産となります。そして、何より子育てに奮闘するお母さん、お父さんもご自身の好きなコトやモノでエネルギー補給することを大事にしてくださいね。
このコラムが子育て中のお母さん、お父さんの少しでもお役に立てることを願っています。
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疋田 みわ 先生
(心理士・こども家庭局総合療育センター課長)
臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2023年度より、神戸市総合療育センターの相談診療課長として、障害や発達の特性をもつ子どもの相談や療育指導に関することなど、子どもの発達相談支援施策に携わる。子どもの発達や子どもとの接し方などについてコラムを執筆予定。