2023年11月01日
かんしゃくのお話
子どもは3歳ぐらいで自我が出始め少しずつ自分というものを意識するようになります。そして4歳頃になってくると、幼稚園など集団に入っている子も多くなるかと思いますが、そこでお友だちと一緒に遊んだり喧嘩したりしながら、少しずつ社会性を身につけていくようになります。3歳から4歳の頃はお友だちと玩具の取り合いをしながら、なかなか我慢できなくて泣いたり怒ったりしていた子も、年長クラスになり卒園する頃には、お気に入りの玩具をお友だちと譲り合って使ったり、順番に貸し借りしたり、お友だちと協力し合って一つの制作物を作り出来上がったことを一緒に喜んだりできるぐらいにまで成長していきます。子どもの成長や集団の力ってすごいな!と感じさせられます。
そうした子どもの成長の過程で、我が強く自己主張して、何でも自分でやりたがり自分の思い通りにしないと気が済まなくなる時期があります。万能感でいっぱいになり、「僕がやる。」と譲らない。「お父さんお母さんの手なんて借りなくても自分でできるもん。」と本気で思い、「僕が‥私が‥。」という時期です。しかし、実際はそううまくはいきません。これまでは何でも親がやってくれ手伝ってくれていたのですから、そんなに急に1人で何でもできる訳もないのです。それはお子さんの力が足りないのではなくて当たり前のことなのです。でも、「僕できるもん!」「私がやる!」と言い切った手前、うまくいかないととっても悔しいしイライラします。そして、時に癇癪を起こしてしまいます。またそんな気分を切り替えられず周りに当たってしまうことも‥。
癇癪には手を焼く親御さんも多いですが、それはお子さんのせいでも親のせいでもないですよね。誰の心の中にも居るイライラ虫くんのせい・・ということにしておきましょう。そしてお子さんはもう大きくなってきたのでホントは自分でできるのです。今日はたまたまうまくいかなかっただけです。でも本当は、「まだもう少しお父さんお母さんに甘えたいし手伝って欲しい。」これが本音ですね。そんな自分の気持ちと戦って子どもは少しずつ成長します。今日は少しイライラ虫くんが勝ってしまっただけで、お子さんのせいではない、悪いのはイライラ虫くんなのです。
では、一緒に心の中からイライラ虫くんを追い出しましょう。イライラして手足をバタつかせているかも知れません。怒って大声で泣き叫びその場にひっくり返っているかも知れません。少し身体をくすぐったり、お子さんの好きなキャラクターになって話しかけてみてください。そして、お子さんの注意がこちらに向いたら、「お父さんお母さんは、○○ちゃんが1人でちゃんとできることを知ってるよ。だから大丈夫!イライラ虫くんを一緒に退治しようか。」とでも言ってみますか。「痛いの痛いの飛んでけ~」のように「イライラ虫くん飛んでけ~」と。気分を変えてやるため冗談ぽく関わり笑わせることができたら、癇癪はあっという間に治まることも結構多いです。
お子さんによっては発達特性があり感情コントロールが難しい場合もありますが、どんなやり方がお子さんに合うか、場面や気分を変える働きかけを色々と試してみましょう。
※旧子育て応援サイト 2022年8月26日掲載分
谷口 美佳 先生
(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)
臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2016年度より、こども家庭センター判定指導担当課長として、あらゆる子どもの相談に関して、心理的な視点から職員へのスーパーバイズ、児童心理司の統括、育成に携わる。心理的観点と現場経験から感じた子育てに関するコラムを執筆予定。