2023年12月04日

子どもの急病どうしたらいい?<その1> 医師が解説!知っておきたい対処法と病院のかかり方。

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子どもがケガをしたり、急に具合が悪くなると心配ですよね。何が起こるかは予測不可能ですが、代表的な病気の対処法などはあらかじめ知っておくと、いざというとき慌てずにすむことがあります。子どもの急病はどんなことに気をつければよいのか、どう対処すればよいのか、小児科の医師に話をうかがいました。

藤岡一路医師の写真

<お話をうかがった方>

神戸大学医学部附属病院 小児科(こども急性疾患学部門)特命教授 藤岡一路医師

子どもの急な体調不良で多いのはどういうものですか?

一番は発熱。その他には腹痛、おう吐などが、比較的多く見られる症状です。

発熱したら、すぐに病院へ行ったほうがよいのでしょうか?

生後3ヵ月未満の赤ちゃんで、38度以上発熱しているときは、必ず病院を受診しましょう。
この時期の赤ちゃんは、基本的に母体から移行した免疫で守られています。にもかかわらず発熱するというのは、一般的なカゼとは考えにくく、重い感染症の可能性があるからです。

生後3ヵ月以降なら、急いで病院へ行かなくても大丈夫ですか?

生後3ヵ月を過ぎると、いわゆるカゼによる発熱が増えてきます。
熱があっても、普段どおり哺乳・飲食ができていて、よく眠れているようであれば、基本的には慌てて病院へ行かなくてもよいと考えます。まずは家でゆっくり寝かせてあげて、様子を見てください。

気をつけてあげてほしいのは、発熱以外にも、呼吸が苦しそう、哺乳・飲食ができない、しんどくて眠れないなど、他の症状も伴っている場合です。つらい症状があると、それによってさらに体調が悪化することがあるので、一度病院で診てもらうことをおすすめします。

他に、発熱で気をつけることはありますか?

熱が5日以上続く場合は、細菌感染症や川崎病などの病気が隠れている可能性もあるので、必ず病院で診てもらいましょう。

なお、予防接種を受けた翌日は熱が出ることがあります。その際は、活気があり発熱以外の症状がなければ様子見で大丈夫です。

腹痛の原因は、どんなことが考えられますか?

私が診療していて体感的にもっとも多いのは、便秘です。子どもは大人と比べて腸のはたらきが未熟なため、便が硬くなって出にくくなりやすいのです。

また、感染性の胃腸炎でも腹痛を起こすことがあります。その場合は、下痢やおう吐を伴うことが多いです。

便秘や胃腸炎による腹痛の対処法は?

便秘による腹痛は排便すれば軽快することが多いですし、胃腸炎もおなかの状態がよくなれば自然に回復します。
とはいえ、頑固な便秘の場合は浣腸してもらったほうがいい場合もありますし、胃腸炎で水分もとれない状態だと点滴が必要になることもあります。判断に迷ったり、心配なときは病院を受診してください。

なかなか痛みがおさまらない場合は、他の病気の可能性を疑わなくてはなりません。

腹痛を起こす他の病気とは、どういうものですか?

特に見逃してはならないのが、腸重積(ちょうじゅうせき)と虫垂炎(ちゅうすいえん)です。

腸重積は、腸の一部が重なり合って血流が悪くなる病気です。2歳くらいまでの乳児に発症しやすく、悪化すると腸管が壊死して命にかかわります。
腹痛におう吐や血便(便に血が混じること)を伴うような場合、不機嫌が持続する場合は、必ず病院を受診してください。

虫垂炎は、いわゆる盲腸です。子どもに限らず幅広い年齢層に起こりうる病気で、これも放っておくと腸が破れて命にかかわることがあります。
一般には右の下腹部が痛くなるといわれていますが、子どもは正確に表現することができないため、腹痛が長く続くようなら、やはり病院を受診すべきです。

食べたものを吐いてしまうときは、どうしたらいいですか?

おう吐は、先ほども述べたように感染性の胃腸炎が考えられます。お子さんで多いのは、下痢とセットで起こる夏カゼです。

胃腸炎によるおう吐の基本的な対処法は、飲食を避けることです。吐くときは無理に食べさせず、少量の水分だけをとらせて、まずはおなかの状態がよくなるのを待ちましょう。

おう吐で病院へ行かなければならないのは、どんなときですか?

病院を受診するかどうかは、水分がとれるかどうかが目安になります。
一定期間の絶食の後もなお少量の水分さえ受け付けないなら、脱水状態になってしまう可能性があるので、病院へ行くべきです。
水分はとれているけど絶食しても回復せず、固形物がとれない状態が数日続く場合も、受診をおすすめします。

子どもの急病で病院へ行く場合は、どこへ行ったらいいですか?

平日であれば、まずはかかりつけの病院へ行ってください。
「基本的には様子見で大丈夫でしょう」と述べた症状でも、病院へ行ってはいけないということではありません。心配なら、日中の病院があいている時間に受診しましょう。

先に説明したような、受診したほうがよいと思われる症状で、夜間や休日など一般の病院があいていない時間帯は、神戸市では「神戸こども初期急病センター(外部リンク)」で診療が受けられます(小児内科のみ)。

こども初期急病センターの外観写真

子どもがケガをしたときの対処法も教えてください。

一部の小児救急医を除いて、小児科医はケガの対処の専門家ではありません。ですので、一般にケガは小児科ではなく、大人と同じ外科の対応になることが多いです。
たとえば頭を打ったりしたときは外からは見えない障害が起きている可能性もあるなど、ケガに関しては軽症か重症かの判断基準を一概に示すことはできません。子どもがケガをして判断に迷うときは、神戸市の救急相談ダイヤル「#7119」に相談してください。

最後に、子どもの健康を見守る親御さんへのメッセージをお願いします。

お子さんの体調を見極める際、もっとも大切なポイントは「元気かどうか」です。特に生後半年以内の小さい子どもであれば、たとえばいつもと泣き声が違う、昨日までしなかったような動作をしているなどの変化があっても、それが健康上の問題によるものなのか、成長過程における変化なのかを判断することは難しいものです。基本的にはミルクをしっかり飲んで、元気があれば、さほど心配することはないでしょう。
まずは「元気かどうか」を、しっかり見てあげてください。そして、ぐったりしている、機嫌が悪い、ミルクを飲まないなど、何か困っている症状があるときは、ためらわずに病院を受診してください。

なお、「熱を出したとき」「けいれん(ひきつけ)を起こしたとき」「おう吐・下痢のとき」「せき・ゼーゼー」「やけどをしたとき」「あたまをうったとき」の対処法については、神戸こども初期急病センターのホームページ内『こんなときどうする?』のページも参考にしてください。
https://www.kobe-kodomoqq.jp/casestudy/

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