2023年12月22日
地域の子育て課題
年の瀬が迫る12月になりました。皆様、どうお過ごしでしょうか?アメリカではホリデーシーズンという事もあり、いつもよりみんなが気軽に話しかけてくれるので、私のホームシックも和らいできた気がします。
アメリカでは、日本ほど子育て支援が充実していないと前回のコラムにも記載しましたが、少子化が進まない理由は何なんだろうと一度考えてみました。もちろん、元々人口が多いのも一つの理由だとは思いますが、町全体が子連れに優しいという印象を受けます。バスに乗れば、運転手さんがベビーカーを乗せるためにバスの車高を下げてくれたり、運賃を渡す時にもたもたしていても怒ったり、せかしたりする人はおらず、とても居心地よく過ごすことができています。また、公園に行けば話してかけてくれる人も多く、こういう雰囲気が子育てを孤独に感じさせないのではと思いました。
かつて私が第1子を生んだ時には、社会から少し切り離された思いをしました。子どもと行く場所は限られ、一緒に電車に乗るのも怖かったです。喫茶店でさえ、子連れで入ってはいけないように感じました。それは世間の目をとても気にしていたのだと思います。お行儀よく、公共の場では泣かないように。今考えると気にしすぎなのですが、それを受け入れてくれる環境かどうかは、子育て中の親の心理状態にとても大きく影響するように思います。
昔に比べて、地域で子育てするという雰囲気は減ってきました。核家族化が進み、その分、親が感じる責任感もより一層高まってきている印象です。抱え込む責任は増える一方で、吐き出す場所がないとなると、やはりメンタルヘルスの不調をきたします。少し声掛けをしてくれる人がいたら子育てに奮闘している親の気持ちはどれだけ楽になるでしょう。
孤独な子育ての負担を減らそうと、神戸市ではファミリー・サポート・センターや身近にある児童館など、地域で子育てをしていく取り組みが少しずつ浸透してきています。もし今ある支援にさらに追加するとしたら、日々の生活の中で子育て中の方に気軽に声をかけてくれる人が増えれば、子育てを孤独に感じたり、嫌に思ったりする機会も減るのではないかと思いました。一人一人の心がけで変われるのなら、明日からでもすぐに出来る方法ではないかと思います。このコラムを読んで共感してもらえた方が、子育て中の親御さんに話しかけてもらえたら嬉しいです。
井窪 薫 先生
(精神科医・4児の母)
精神保健指定医。6歳、3歳、2歳、1歳を子育て中。長女の子育て中に大学院に通い、医学博士、精神科専門医を習得。現在はアメリカで児童精神医学を勉強中。